ライトノベルに兵法三十六計、五輪書、浄土真宗を取り入れる斬新な試み
最近また、兵法書とか仏教本とか読み始めましたが、こういった知識をベースに小説が書けないか考えています。
注意点や考え方についてまとめと考察をやってみました。
ライトノベルに兵法三十六計、五輪書、浄土真宗を取り入れる斬新な試み
はじめに
近年、異世界転生や学園ファンタジーなど、様々なジャンルのライトノベルが出版されていますが、読者の関心を惹きつけるためには、オリジナリティ溢れる設定やストーリー展開が求められます。そこで本稿では、兵法三十六計、五輪書、浄土真宗という一見ライトノベルとは縁遠い要素を取り入れ、これらを融合させることで、既存の枠にとらわれない斬新な作品を生み出す可能性について考察していきます。
1. 三つの要素について
1.1 兵法三十六計
兵法三十六計とは、古代中国で生まれたとされる兵法書です。戦いに勝つための三十六の計略が記されており、その内容は戦場だけでなく、現代社会のビジネスや人間関係にも応用できるとされています。1 有名な「三十六計逃げるに如かず」は、不利な状況では無理せず撤退することも重要であるという教えです。1 これは、中国の斉について書かれた歴史書である『南斉書』の「王敬則伝」に由来します。中国南北朝時代に、南朝の王敬則が斉王父子に攻め入ったものの、斉王父子は遁走しました。この状況を見て、王敬則は「檀公三十六策、走是上計」(檀公の三十六の計略のうち、逃げるのが最善の策だ)と述べたとされています。1
1.2 五輪書
五輪書は、江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵が晩年に著した兵法書です。剣術の技術論だけでなく、精神論や人生哲学も含まれており、現代でも多くの人々に影響を与えています。2 「地之巻」「水之巻」「火之巻」「風之巻」「空之巻」の五巻から構成され、剣術を通して、あらゆる状況に対応できる柔軟性と心の強さを説いています。2 例えば、「水之巻」では、心も体も水のように柔軟であるべきと説き、状況に応じて変化に対応することの重要性を説いています。2
1.3 浄土真宗
浄土真宗は、鎌倉時代に親鸞によって開かれた仏教の一宗派です。阿弥陀如来の本願力によって、すべての人が救われるという教えが特徴です。善悪や能力に関係なく、すべての人が平等に救済されるという教えは、現代社会においても重要な意味を持つと考えられます。
2. ライトノベルへの要素の組み込み
2.1 兵法三十六計の活用
兵法三十六計は、登場人物たちの戦略的思考や駆け引きを描く上で有効なツールとなります。
恋愛における駆け引き: 主人公が、気になる相手を振り向かせるために、三十六計の計略を駆使する。たとえば、「美人計」を用いて相手の気を引く、あるいは「反間計」でライバルを出し抜くなど、恋愛模様をスリリングに展開することができます。
例えば、主人公は意中の相手と親しい友人に接近し、その友人を通して相手の好みや情報を収集する「反間計」を用いるかもしれません。しかし、この計略が相手に露見した場合、主人公は信頼を失い、恋愛関係を築くどころか、友情さえも壊してしまう可能性も孕んでいます。
友情関係における葛藤: 親友との誤解を解くために、「苦肉計」で自分の誠意を示したり、「借屍還魂」で過去の出来事を利用したりするなど、友情関係における葛藤を乗り越えるための知恵として活用できます。
例えば、主人公は親友を助けるために、あえて自分を犠牲にして窮地に陥り、「苦肉計」によって親友の誤解を解き、友情を取り戻そうとするかもしれません。しかし、この計略が失敗した場合、主人公は親友を失うだけでなく、深い傷を負ってしまう可能性もあります。
異世界でのサバイバル: 異世界に転生した主人公が、三十六計を駆使して、敵対勢力との戦いを生き抜く。
例えば、圧倒的に不利な状況下で、主人公は「走為上計」に基づき、一旦戦場から離脱し、態勢を立て直してから反撃の機会を伺うという戦略的な判断を下すかもしれません。
学園内の権力争い: 学園を舞台に、生徒会選挙や部活動の覇権争いなど、様々な場面で三十六計を用いた頭脳戦を展開する。
例えば、主人公は生徒会長選挙で勝利するために、「離間計」を用いてライバル陣営の結束を崩し、支持者を奪っていくといった戦略を立てるかもしれません。
2.2 五輪書の精神の描写
五輪書の精神は、主人公の成長や心の葛藤を描く上で深みを与えます。
スポーツ: 部活動で活躍する主人公が、五輪書の教えを通して、技術だけでなく精神面も鍛錬し、ライバルとの試合に挑む。
例えば、主人公はバスケットボール部でレギュラーの座を争うライバル選手との試合中、五輪書の「水之巻」の教えを思い出し、相手の動きに合わせて柔軟にプレイスタイルを変えることで、勝利を掴むかもしれません。
武道: 剣道や弓道など、武道に打ち込む主人公が、五輪書の精神を体得することで、己の弱さを克服し、真の強さを手に入れる。
例えば、主人公は剣道部で、五輪書の教えである「心を不動にすること」を実践することで、プレッシャーに打ち勝ち、全国大会で優勝を目指すかもしれません。しかし、心の強さを追求するあまり、周囲の人々とのコミュニケーションを疎かにしてしまい、孤独に陥ってしまう可能性も描かれます。
逆境: いじめや挫折など、様々な逆境に直面した主人公が、五輪書の教えから生きる希望を見出し、困難を乗り越えていく。
例えば、学校でいじめに遭い、心を閉ざしてしまった主人公が、五輪書の「空之巻」にある「何事にもとらわれず、心を空にすること」の教えを通して、自分自身を見つめ直し、いじめを克服する勇気を得るかもしれません。
自己犠牲: 他者を救うために、五輪書の「空之巻」で説かれる無心の境地で自己犠牲の精神を発揮する。
例えば、主人公はテロ事件に巻き込まれた際に、五輪書の教えから得た冷静さと勇気を振り絞り、人質を救うために自らを犠牲にするという決断を下すかもしれません。
2.3 浄土真宗の教えの反映
浄土真宗の教えは、主人公の心の葛藤や成長、物語のテーマに深みを与えます。
差別: 身分制度や貧富の差など、差別が根強く残る世界で、浄土真宗の教えに基づき、すべての人が平等であることを訴える主人公を描く。
例えば、貴族と平民の間で差別が存在する世界で、主人公は浄土真宗の「悪人正機説」を信条とし、身分に関係なくすべての人々を平等に扱うべきだと主張することで、周囲の人々の意識を変革していくかもしれません。
贖罪: 過去の過ちに苦しむ主人公が、浄土真宗の教えを通して、罪を悔い改め、新たな人生を歩み始める。
例えば、主人公はかつて犯した罪の意識に苛まれ、絶望の淵に立たされます。しかし、浄土真宗の「他力本願」の教えに出会い、阿弥陀如来の慈悲によって救われることを知り、過去の過ちを乗り越えて新たな人生を歩み始める決意をするかもしれません。
生死: 大切な人の死を経験した主人公が、浄土真宗の教えによって死生観を見つめ直し、悲しみを乗り越えていく。
例えば、主人公は幼馴染の死という悲しい出来事を経験し、深い悲しみに暮れます。しかし、浄土真宗の教えに触れることで、死は終わりではなく、新たな生への出発であることを理解し、悲しみを乗り越えて前向きに生きていく力を得るかもしれません。
救済: 絶望的な状況に陥った主人公が、浄土真宗の教えによって心の支えを見つけ、救済される。
例えば、戦争で家族を失い、生きる希望を失った主人公が、浄土真宗の僧侶との出会いを通して、阿弥陀如来の慈悲と救済の教えに触れ、心の安らぎを取り戻し、再び立ち上がる力を得るかもしれません。
3. 要素の組み合わせによる相乗効果
上記の要素を組み合わせることで、より複雑で奥深いストーリー展開やキャラクター設定が可能になります。
例1: 兵法三十六計を駆使して異世界で戦う主人公が、五輪書の精神で心の強さを養いながら、浄土真宗の教えによって心の葛藤を乗り越えていく。
例えば、主人公は敵対する国の武将を欺くために「美人計」を用いることになりますが、その過程で罪悪感に苛まれます。しかし、浄土真宗の「煩悩具足の凡夫こそが救われる」という教えに支えられ、自らの行動を正当化し、戦いを続ける決意を固めるかもしれません。
例2: 恋愛において三十六計を用いる主人公が、五輪書の教えを通して相手の心を理解し、真の愛に目覚める。
例えば、主人公は当初、「離間計」を用いて恋敵を排除しようとしますが、五輪書の「相手を知る」という教えを実践する中で、恋敵の良い面や、相手への真摯な想いに気づき、自らの浅はかさを反省するかもしれません。そして、計略を用いることをやめ、誠実な態度で相手に接することで、真の愛を勝ち取る道を選ぶという展開も考えられます。
例3: 浄土真宗の教えを基に人々を救済しようとする主人公が、五輪書の精神で困難に立ち向かい、兵法三十六計を用いて敵対勢力と戦う。
例えば、主人公は浄土真宗の教えを広める中で、弾圧する勢力に命を狙われます。その際、五輪書の「臨機応変」の精神と兵法三十六計の「瞞天過海」の計略を駆使し、敵の目を欺きながら、人々を救済するというスリリングな展開が考えられます。
これらの要素を組み合わせることで、単なる戦術論や精神論に留まらず、人間の心の奥底にある葛藤や成長、そして人生の意味といった普遍的なテーマを描くことができます。
4. 魅力的なタイトルとあらすじ
タイトル例
「三十六計で恋を勝ち取れ! ~剣と念仏で異世界無双~」
「五輪書と浄土真宗 ~最強の剣士は、慈悲の心を持つ~」
「恋愛戦国時代! 兵法三十六計で目指せ、学園の頂点!」
あらすじ例
平凡な高校生だった主人公は、ある日突然異世界に召喚される。そこは、剣と魔法が支配する弱肉強食の世界だった。 生き残るために、主人公は前世で読んだ兵法三十六計を駆使し、数々の戦いを切り抜けていく。 その中で、伝説の剣豪・宮本武蔵の五輪書と出会い、剣術だけでなく精神面も鍛錬していく。 さらに、浄土真宗の教えに触れることで、主人公は争いのない平和な世界を築くことを決意する。
5. 作品の方向性
ジャンル: 異世界ファンタジー、恋愛、学園
テーマ: 愛、友情、成長、正義、平和
ターゲット読者: ライトノベル好きの若者、特に歴史や哲学に興味がある読者
6. 執筆にあたっての注意点
設定の整合性: 兵法三十六計、五輪書、浄土真宗をそれぞれの世界観に自然に溶け込ませ、矛盾が生じないように注意する必要があります。
キャラクターの魅力: 魅力的なキャラクターを創造し、読者の共感を呼ぶことが重要です。
ストーリーの面白さ: 読者を飽きさせない展開と、意外性のある結末を意識する必要があります。
分かりやすさ: 専門用語を避け、読者が理解しやすいように丁寧に説明する必要があります。
7. 結論
兵法三十六計、五輪書、浄土真宗という一見異質な要素をライトノベルに取り入れることで、斬新で奥深い作品を生み出すことができる可能性を秘めていることが分かりました。これらの要素は、それぞれが異なる視点から人間の行動原理や心の在り方を捉えており、これらを組み合わせることで、多面的で複雑な人間ドラマを描くことができます。
特に、兵法三十六計の戦略性、五輪書の精神性、そして浄土真宗の宗教観という三つの要素の対比は、主人公の葛藤や成長をより深く描き出す上で効果的です。
これらの要素を効果的に活用し、読者の心を掴むような魅力的な作品を創造していくことが期待されます。もしかすると、この試みは、既存のライトノベルの枠を超えた、新たなサブジャンルの誕生に繋がるかもしれません。
引用文献
1. 「三十六計逃げるに如かず」の意味とは? 兵法三十六計も ... - Oggi, 2月 5, 2025にアクセス、 https://oggi.jp/6948126
2. 宮本武蔵『五輪書』から読み解く戦いの心得 - IDATEN Ventures, 2月 5, 2025にアクセス、 https://www.idaten.vc/post/%E5%AE%AE%E6%9C%AC%E6%AD%A6%E8%94%B5%E3%80%8E%E4%BA%94%E8%BC%AA%E6%9B%B8%E3%80%8F%E3%81%8B%E3%82%89%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F%E6%88%A6%E3%81%84%E3%81%AE%E5%BF%83%E5%BE%97
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