Macユーザー専用:egword Universal 2(通称イージーWord)使い勝手ガチ検証【2025】
Macユーザー専用:egword Universal 2(通称イージーWord)使い勝手ガチ検証【2025】
“縦書きの幸福、ここに極まれり”──名編集者あやこ(日本語組版オタク)
この記事は、Mac専用日本語ワープロ egword Universal 2(以下、イージーWordと呼ぶファンも多い)を、小説執筆という現場目線でねっとり検証するレビューだ。結論から言うと、縦書き・原稿用紙レイアウト・ルビ・縦中横など日本語組版の“気持ちよさ”は現行Macアプリの中でもトップクラス。いっぽうで、Word互換や共同作業は割り切りが必要。向き/不向きをはっきり描く。
TL;DR(3行まとめ)
書く気が出る表示品質:縦書き・禁則・原稿用紙が美しく、推敲が進む。
清書〜PDF出力は快適:改ページ・段落・図版回り込みまで“日本語の正義”で組める。
Word往復は弱め:docxや変更履歴を“編集部と往復”する用途には向かない。最終はPDF/RTF基軸が安全。
検証環境と前提
MacBook Air(Appleシリコン)/macOS 14–15帯、内蔵日本語IME+ATOK併用。
文字数は8〜20万字級の長編、縦書き中心。
ゴールは**商業入稿(Word/PDF)と同人印刷(A5本)**の両対応。
1. 何が良いの?──“日本語のための器”としての完成度
1-1. 縦書きが速くて正確
縦書きでもスクロール・入力が軽い。縦中横(数字のまとまりの縦配置)や句読点のぶら下がりが自然で、旧TrueTypeフォントでも縦字形に正しく切り替わる。結果、表示のズレに気を取られずに本文へ集中できる。
1-2. 原稿用紙レイアウト= “最後の推敲装置”
20×20/15×40などのマス目に文字が吸い込まれる快感。行末の追い込み(句読点の処理)や二重カギ括弧の1マス共存など、手書きの文法で仕上げられる。紙原稿世代の編集とも話が早い。
1-3. ルビ・傍点・圏点・ドロップキャップまで
ふりがな(ルビ)や傍点(圏点)はもちろん、脚注/文末注/目次/索引、アウトラインやスタイル、正規表現検索といった長文装備が標準。変更履歴も内蔵なので、自分内推敲の記録が視覚化できる。
1-4. 速度と安定(Appleシリコン最適化)
巨大原稿でもスクロールがヌルい。起動1秒台の感覚で“すぐ書ける”。落ちにくい。これ、長編では正義。
2. どこが弱いの?──“外界(Word)との外交”は苦手
2-1. Word往復は割り切りが必要
docxの読み書き互換は“macOSの機能依存”という事情で制限あり。
組版情報(スタイル・脚注・図表位置など)が崩れることがある。
編集部との変更履歴の往復は非推奨。PDFで見本→修正は本文に反映等、運用工夫が要る。
やり取り多めの案件はWord中心にするのが安全。
2-2. 共同編集・コメントスレッド
Google Docs や Word の同時編集・コメント返信スレッド文化とは非同期。一人で詰めて仕上げる清書場として使い、外との橋渡しは別レイヤで考えるのが平和。
3. UI/UX:最短10分で“縦書き執筆机”を作る
新規書類 → 縦書き。
レイアウト:
標準/グリッド/原稿用紙から選ぶ(長編はグリッド、最終推敲は原稿用紙)。
スタイル:本文/地の文強調/会話/見出しを先に作る。
文字数パネルを出し、総文字数/選択文字数を常時表示。
正規表現検索をお気に入りに(例:語尾「た。」の連打検知)。
アウトラインに章を登録、ブックマークで重要段落に飛び先を置く。
小技:禁則処理は“弱い”→“強い”で見え方が変わる。行末の読みやすさが1段上がるので好みで調整。
4. 作家向けの実用ワークフロー(サンプル)
4-1. Scrivener骨組み → イージーWord清書(文芸寄り)
章・節・メモはScrivenerで。本文が固まったらRTFでエクスポート。
egwordに貼って縦組・原稿用紙で最終推敲→PDFを編集へ渡す。
編集側修正は箇条書きメールやPDFコメントで受け、本文へ反映。
4-2. 取材混じりノンフィクション(Mac完結)
取材メモはObsidian/メモ、文字起こし整形後にegwordへ。
脚注/文末注で出典管理。索引までegword内で作成。
4-3. 同人誌A5仕上げ
本文確定→原稿用紙レイアウトで最終確認。
見開きとノンブル、奥付を別セクションで管理。
出力はPDF/X相当の設定(印刷所指定に従う)。
5. “気持ちよく書ける”ポイントを深掘り
ルビの扱い:かなサイズ・親文字との間隔・縦横位置が視覚的に分かりやすい。ふりがな多めのラノベでも崩れない。
縦中横の賢さ:年号や二桁数字が自然にまとまる。地味だが視線の引っかかりを減らす。
正規表現検索:語尾の掃除、記号の統一、半角/全角の混入検知が一瞬。
文字数パネル:全体/セクション/選択の切替が早く、締切仕様に優しい。
アウトライン:推敲時の見出しリストで迷子になりにくい。
6. ここは割り切り:運用でカバーするコツ
Word互換:
編集と往復する原稿は最初からWordで。egwordは清書・最終整形に徹する。
どうしてもegword本文を渡すならRTF or PDF。Wordのdocxは最小限。
コメント・履歴の共有:egwordの変更履歴は自分用記録と割り切り、修正指示はPDFコメント/テキスト指示で受ける。
共同作業:本文はegword、プロット・指示・差し戻しはNotion/Google Docsなど外部で。
7. 競合比較(Mac限定)
項目 | egword(イージーWord) | Word for Mac | Pages |
---|---|---|---|
縦書き | 最上級(縦中横・原稿用紙・禁則) | 対応はするが細部に難 | 基本OKだが高度機能は薄め |
ルビ・圏点 | ◎ | ○ | ○ |
変更履歴(自分用) | ◎ | ◎(かつ共同作業◎) | △ |
大規模長文の軽さ | ◎ | ○ | ○ |
Word互換 | △(最低限) | ◎ | ○ |
共同編集 | × | ◎ | ○ |
価格感 | 買い切りでお手頃 | サブスク前提 | 無料(Mac同梱) |
総評:**「ひとりで仕上げる縦組長文」はegwordに歩があり、「チームで回す案件」**はWord一択。
8. よく使う設定プリセット(配布想定)
文芸標準(縦書き):游明朝 11.5pt/行間1.3/字詰め95%/禁則=強/句読点ぶら下げON/段落前後=0/0。
ラノベ対話寄り:ヒラギノ明朝 11pt/行間1.35/会話の前後に0.5行の余白。
締切モード:文字数パネル常時表示/検索お気に入りに「語尾:た。」「〜していた。」を登録/アウトラインを左に固定。
9. 価格・導入・対応OS(2025年時点)
価格:買い切り(App Store)
動作:macOS 10.13以降、Appleシリコン最適化。
サイズ:おおむね30MB前後。
体感として“軽い・安定・速い”。Macで日本語を正しく、気持ちよく組むための器として完成度が高い。
10. 結論:イージーWordは“清書エンジン”。Wordの相棒に
小説・エッセイの最終整形や同人誌の本文仕上げがメインターゲット。
編集部とのやり取りがWord前提なら、本文書き=Wordに寄せる。egwordは仕上げ専業で使うと幸せ。
独習派・ひとり完結派には、現行Macで最高レベルの縦書き快楽を与えてくれる一本。
付録A:初期設定チェックリスト
付録B:ショートカット(覚えると幸福度上がる)
検索/置換:⌘F / ⌥⌘F
スタイル適用:⌥⌘S(カスタム推奨)
アウトライン表示:⌥⌘O(好みで)
文字数パネル:⌥⌘C(好みで)
付録C:トラブルシュート
Wordから貼ったら崩れた → まずRTF経由にし、段落・スタイルを貼り直す。
PDFの字詰めが違う → 出力解像度・フォント埋め込み設定を見直す。印刷所プリセットを確認。
句読点の位置が気になる → 禁則設定と句読点ぶら下げを確認。見栄えは“強”で整うことが多い。
最後に
イージーWordは、“Macで日本語をちゃんと組みたい”というわがままに真正面から答える稀有な道具だ。書き味(表示の気持ちよさ)が、結局は書き続ける体力を産む。WordやDocsとケンカさせず、相棒として役割分担すれば、今日から原稿がほんの少し速く、きれいに進む。
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